「やりたいことが決まらないまま、ずっと先延ばししている」
「進路や転職を決められないのは、モラトリアム?」
先延ばしについて調べると、
モラトリアム
という言葉が出てくることがあります。
どちらも、
今すぐ決めない・行動しない
という点では似ています。
しかし、先延ばしとモラトリアムは同じ意味ではありません。
先延ばしは、
やろうと思っている行動を後へ延ばすこと
を指します。
一方、心理学で使われるモラトリアムは、
自分が何を選ぶのかを探索している状態
と関係する概念です。
例えば、
レポートを書かなければいけないのに動画を見る。
という状態と、
大学を卒業したあと何をしたいのか決められない。
という状態では、起きていることが違います。
この記事では、先延ばしとモラトリアムの意味と違いを整理しながら、決断や行動を先送りし続けているときに何ができるのかを紹介します。
モラトリアムとは?
モラトリアム(moratorium)は、もともと、
猶予
を意味する言葉です。
心理学では、エリク・エリクソンの発達理論や、その後ジェームズ・マーシアが整理したアイデンティティ・ステイタスの研究と関連して使われています。
特に青年期には、
自分は何をしたいのか。
どんな仕事を選ぶのか。
どんな価値観を持つのか。
といったことを考えながら、自分のアイデンティティを形成していきます。
その中で、
まだ特定の選択へ強くコミットせず、さまざまな可能性を探索している状態
がモラトリアムと呼ばれます。
そのため、本来の意味では、
何もせず怠けている状態
と同じではありません。
モラトリアムは必ずしも悪い状態ではない
日本語では、
「モラトリアム人間」
「いつまでもモラトリアム」
のように、少し否定的な意味で使われることがあります。
しかし、心理学上のモラトリアムは、
単純に悪い状態を表す言葉ではありません。
例えば、
大学卒業後の進路について、
会社員になる。
大学院へ進む。
別の仕事を探す。
という選択肢を比較しているとします。
まだ一つに決めてはいません。
しかし、
説明会へ行く。
働いている人の話を聞く。
自分の興味を調べる。
実際に経験してみる。
という探索をしているなら、
決めていない=何もしていない
とはいえません。
決断する前に探索する期間そのものには意味があります。
先延ばしとは?
先延ばしは、
やろうと思っていることを、不必要に後へ延ばしてしまうこと
です。
例えば、
今日レポートを書くつもりだった。
↓
面倒なので動画を見る。
↓
夜になった。
↓
明日にする。
という状態です。
本人の中では、
レポートを書く
という方向はすでに決まっています。
問題になっているのは、
いつ行動するか
です。
これがモラトリアムとの大きな違いです。
先延ばしそのものについては、先延ばしとは?やることを後回しにしてしまう意味・例・原因をわかりやすく解説でも紹介しています。
先延ばしとモラトリアムの違い
大まかに整理すると、次のようになります。
| 先延ばし | モラトリアム | |
|---|---|---|
| 主な問題 | 行動を後へ延ばす | 選択肢を探索している |
| やること | ある程度決まっていることが多い | まだ決まっていないことがある |
| 例 | レポートを書かない | 進路を検討している |
| 必ず問題? | 困る先延ばしになることがある | 探索期間として意味がある |
| 次に考えること | どう始めるか | 何を選ぶか |
例えば、
転職したいけれど応募しない
なら先延ばしの可能性があります。
一方、
転職するか、今の会社に残るか、別の働き方をするか考えている
なら、探索や意思決定の問題です。
似ているようで、
止まっている場所が違います。
モラトリアムと先延ばしが重なることもある
もちろん、二つが完全に別々になるとは限りません。
例えば、
「転職するか考えたい」
と思っているとします。
本来なら、
自分が何をしたいか整理する。
求人を見る。
会社について調べる。
人に話を聞く。
という探索ができます。
しかし、
「そのうち考えよう」
と何か月も何もしない。
という状態なら、
選択を探索するモラトリアムの中で、必要な行動を先延ばししている
と考えることもできます。
つまり、
決めていないこと
と、
決めるための行動すらしていないこと
は分けて考えられます。
「まだ決めていない」は先延ばしとは限らない
何かを決めていないと、
「また先延ばししている」
と思うかもしれません。
しかし、
今すぐ決めないほうがいいこと
もあります。
例えば、
就職先。
転職。
進学。
引っ越し。
大きな買い物。
などです。
情報を集める必要があるなら、
すぐに結論を出さないこと自体は問題ではありません。
重要なのは、
決めていない間に何をしているか
です。
情報を集めている。
選択肢を比較している。
実際に試している。
人に話を聞いている。
なら、
意思決定を進めています。
「考えているつもり」で何も変わらないこともある
一方で、
「まだ考え中」
という状態を長く続けているだけの場合もあります。
例えば、
転職について1年間考えている。
でも、
求人を一度も見ていない。
自分の希望を書いたこともない。
誰にも話を聞いていない。
という状態です。
頭の中では、
「どうしよう」
と考えています。
しかし、
判断材料は増えていません。
すると、1年考えても、
同じ選択肢。
同じ不安。
同じ疑問。
を繰り返すことがあります。
この場合は、
考える時間を増やすより、判断材料を一つ増やす
ほうが前へ進みやすくなります。
決めるのが怖くて先延ばしすることもある
選択を先延ばしするとき、
決めたあとに失敗するのが怖い
ことがあります。
例えば、
転職する。
↓
合わない会社だったらどうしよう。
転職しない。
↓
あとで後悔したらどうしよう。
どちらにもリスクがあります。
すると、
決めない
という第三の選択肢が魅力的に見えます。
今決めなければ、
間違った選択をしたことにもなりません。
しかし、
決めない状態を続けることにも、
時間が過ぎる。
機会を逃す。
今の状態が続く。
という結果があります。
「決めない」は、
何も選択していない状態ではなく、現在の状態を続ける選択
になることもあります。
選択肢が多すぎて決められない
モラトリアム的な状態では、
選択肢が多いことで止まる場合もあります。
例えば、
どんな仕事をしたい?
と考えます。
IT。
営業。
企画。
独立。
転職。
今の会社に残る。
資格を取る。
副業をする。
選択肢を増やしていくと、
どれを選べば正解なのか
分からなくなります。
そして、
もっと調べる。
↓
さらに選択肢が増える。
↓
もっと迷う。
という状態になることがあります。
そんなときは、
人生全体の答えを一度に決めようとしない
ことも大切です。
「何になるか」ではなく「次に何を試すか」
例えば、
将来どんな仕事をするべきか
という質問は、とても大きな質問です。
答えが出ないこともあります。
そこで、
質問を変えます。
今月、何を一つ試してみる?
例えば、
興味のある仕事について一冊読む。
求人を10件見る。
その仕事をしている人の話を聞く。
小さな仕事として試す。
勉強を始める。
という行動です。
最終的な答えを決めなくても、
判断材料を増やす行動
はできます。
「決める」と「調べる」を分ける
決断を先延ばししていると、
情報収集と決断が一つになっていることがあります。
例えば、
「転職するか決める」
というタスクです。
これは重いタスクです。
そこで、
決断する
と、
判断材料を集める
を分けます。
今日は、
求人を3件見る。
明日は、
自分が嫌な仕事内容を書く。
週末は、
興味のある会社を調べる。
という形です。
今すぐ、
転職する・しない
を決めなくても構いません。
まず、
決めるための材料を増やす
ことから始められます。
期限のないモラトリアムには区切りを作る
探索することは必要でも、
期限がまったくないと、
いつまでも考え続けることがあります。
そこで、
決断する日ではなく、一度整理する日
を決めます。
例えば、
「今月末に、集めた情報を一度整理する」
とします。
その日までに、
求人を見る。
人に話を聞く。
メリット・デメリットを書く。
といった探索をします。
そして月末に、
今決められるのか。
まだ何が足りないのか。
を確認します。
必ずその日に最終決定する必要はありません。
ただし、
何となく考え続ける状態
には区切りを入れられます。
「保留」に理由をつける
今すぐ決められないなら、
保留することもできます。
ただし、
なぜ保留するのか
を決めます。
例えば、
「情報が足りないので保留」
なら、
何の情報が必要?
と考えます。
「もう少し経験してから決めたい」
なら、
何を経験する?
と考えます。
単なる、
まだ決めたくない
から、
○○を確認するまで保留
へ変えます。
すると、保留中にも次の行動があります。
先延ばしなのか探索なのか確認する
何かを長く決められないときは、次のように考えてみましょう。
1. 何を決めようとしている?
転職するかどうか。
↓
2. 何が分からない?
自分に合う仕事が分からない。
↓
3. 判断材料を増やしている?
何もしていない。
↓
4. 次にできる探索は?
求人を5件見る。
この場合、
「転職する」
という大きな決断をする必要はありません。
まず、
決断するための行動を一つする
ことができます。
モラトリアムを急いで終わらせる必要はない
「いつまでも迷っていてはいけない」
と思って、
無理に答えを出す必要もありません。
探索する時間そのものが必要な場合があります。
重要なのは、
迷っていること
と、
何もせず時間だけが過ぎていること
を区別することです。
調べる。
試す。
比較する。
話を聞く。
考えを書く。
こうした行動によって、
少しずつ判断材料が増えているなら、
まだ決めていないこと自体を問題にする必要はありません。
先延ばししているなら「決断」ではなく「探索」を始める
大きな決断を前にすると、
今日決めなければ
と思うほど動けなくなることがあります。
そこで、
決断ではなく、
10分だけ探索する
と考えます。
例えば、
転職するか決める。
ではなく、
求人を10分見る。
進学するか決める。
ではなく、
学校を一つ調べる。
資格を取るか決める。
ではなく、
試験内容を見る。
とします。
決断の前には、
判断材料を増やす段階
があります。
そこだけ始めます。
Pomolikaで「考え続ける」を「10分調べる」に変える
Pomolikaはブラウザで使えるポモドーロタイマーです。
進路や転職など、
大きなことを決められず先延ばししている
なら、最初から答えを出そうとしなくても構いません。
例えば、
決められずにいることを一つ選ぶ
↓
何が分からないのか書く
↓
判断材料を増やす行動を一つ決める
↓
Pomolikaを10分に設定する
↓
10分だけ調べる・書く・比較する
という流れです。
転職なら、
求人を見る。
進学なら、
学校について調べる。
将来についてなら、
興味があることを書き出す。
10分後に答えが出なくても問題ありません。
目的は、
「どうしよう」と考え続ける状態から、「判断材料が一つ増えた状態」へ変えること
です。
先延ばしそのものへの具体的な対策は、先延ばし癖の治し方も参考にしてください。
まとめ
先延ばしとモラトリアムは、
どちらも今すぐ行動・決断しない
という点では似ています。
しかし、同じ意味ではありません。
先延ばしは、
やろうと思っている行動を後へ延ばすこと。
心理学におけるモラトリアムは、
まだ特定の選択へ強くコミットせず、可能性を探索している状態
と関係する概念です。
そのため、
まだ進路を決めていない。
まだ転職するか決めていない。
というだけで、
先延ばししている
とは限りません。
見るべきなのは、
決めていない間に、判断材料が増えているか
です。
何か月も同じことを考え続けているなら、
最終的な答えを出そうとする前に、
求人を一つ見る。
人に一人話を聞く。
選択肢を書き出す。
10分だけ調べる。
という探索を始めてみましょう。
「今すぐ何を選ぶ?」ではなく、「選ぶために次は何を知る?」
と考えると、止まっていた状態から少し動きやすくなります。