先延ばし自己効力感心理対策

先延ばしと自己効力感の関係は?「自分にはできそう」が行動に与える影響

先延ばしと自己効力感にはどのような関係があるのでしょうか。「自分にはできそう」と感じる自己効力感の意味や、先延ばしとの関連、難しい仕事や勉強を始めやすくするための具体的な方法を紹介します。

「やらなければいけないけれど、自分にできる気がしない」

「難しそうな仕事ほど先延ばししてしまう」

そんなときに関係している可能性があるものの一つが、

自己効力感

です。

自己効力感とは、簡単にいえば、

「自分はこの行動をできそうだ」と感じること

です。

先延ばし研究では、自己効力感と先延ばしとの関連が繰り返し調べられています。

例えば、

「この資料なら作れそう」

と思っている仕事と、

「自分には無理そう」

と思っている仕事。

どちらが始めやすいでしょうか。

後者では、

何から始めればいいか分からない。

失敗しそう。

うまくできる気がしない。

と感じて、作業から離れたくなることがあります。

この記事では、自己効力感とは何なのか、先延ばしとどのような関係が研究されているのか、そして「できる気がしない」仕事をどう始めればいいのかを紹介します。

自己効力感とは?

自己効力感は、心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念です。

簡単に表現すると、

ある状況で必要な行動を、自分がうまく実行できると思える感覚

です。

例えば、

「この問題なら解けそう」

「この資料なら作れそう」

「30分なら走れそう」

「この仕事なら一人でも進められそう」

といった感覚です。

ここで重要なのは、

自分自身を全体として好きかどうか

とは少し違うことです。

「自分は価値のある人間だ」

という自己評価ではなく、

「この行動を自分はできそうか」

に注目します。

自己効力感と自己肯定感は違う

自己効力感と似た言葉に、

自己肯定感

があります。

この二つは同じ意味ではありません。

大まかに分けると、

自己肯定感

→ 自分自身を肯定的に受け止める感覚

自己効力感

→ ある行動を自分が実行できると思える感覚

です。

例えば、

「自分には価値がある」

と感じていても、

初めて担当する難しい仕事について、

「これは自分にはできそうにない」

と思うことはあります。

反対に、自分に自信がない部分があっても、

「この作業なら何度もやっているからできる」

と思える場合があります。

先延ばしとの関係を考えるときは、

そのタスクを自分ができると思えているか

という自己効力感が一つのポイントになります。

自己肯定感との関係については、先延ばしと自己肯定感も参考にしてください。

自己効力感と先延ばしには関連がある

先延ばし研究では、自己効力感との関連が報告されています。

Piers Steelが2007年に発表した先延ばし研究のメタ分析では、691の相関をもとに、先延ばしの原因や関連要因について検討しています。

その結果、

自己効力感は先延ばしを予測する重要な要因の一つ

として報告されました。

ほかにも、

作業への嫌悪感。

衝動性。

課題の結果が得られるまでの時間。

自己コントロール。

達成動機。

などとの関連が示されています。

つまり、

先延ばしは「やる気がない」という一つの原因だけでは説明できず、「自分にできそうか」という感覚も関係する可能性がある

ということです。

PubMed:先延ばし研究のメタ分析

大学生・大学院生の研究でも関連が報告されている

自己効力感と先延ばしの関係は、学習場面でも研究されています。

2020年に大学院生577人を対象に行われた研究では、

学業に関する自己効力感が高いほど、学業の先延ばしが少ないという関連

が報告されました。

この研究では、自己コントロールがその関係を媒介する可能性についても検討されています。

PubMed:大学院生577人を対象にした自己効力感と先延ばしの研究

ただし、こうした研究から、

自己効力感が低いから先延ばしが起こる

と単純な因果関係を断定することはできません。

自己効力感と先延ばしには関連があり、その関係を説明するさまざまな要因が研究されている、と考えるのが適切です。

「できそうにない仕事」を想像してみる

自己効力感と先延ばしの関係は、実際の仕事で考えると分かりやすくなります。

例えば、

いつも作っている定例資料。

初めて担当する難しい企画書。

という二つの仕事があるとします。

定例資料なら、

「30分くらいでできる」

「前回と同じように作ればいい」

と分かっています。

そのため、比較的始めやすいでしょう。

一方、初めての企画書では、

何を書けばいい?

どこまで調べればいい?

この内容で合っている?

自分に作れる?

と分からないことが増えます。

すると、

「できる気がしない」

という状態になります。

そして、

メールを確認する。

簡単な仕事を先にする。

資料を集め続ける。

明日に回す。

といった行動につながることがあります。

「できる気がしない」と始めるハードルが上がる

例えば、

資格試験に合格する

という目標があります。

まだ勉強を始めたばかりなら、

問題集を見てもほとんど解けません。

すると、

「こんなの無理かも」

と思います。

その状態で、

今日は2時間勉強する

と考えると、さらに重く感じます。

一方、

「今日は問題を3問だけ解く」

ならどうでしょうか。

試験に合格できる自信はなくても、

3問ならできそう

と思えるかもしれません。

ここに、先延ばし対策のヒントがあります。

自己効力感を上げてから始める必要はない

「自己効力感が低いなら、自信をつけよう」

と考えるかもしれません。

しかし、

十分な自信がつくまで待ってから行動する

必要はありません。

初めてする仕事なら、自信がないのは自然です。

むしろ、

小さくやってみる。

少しできる。

次もできそうになる。

という順番も考えられます。

つまり、

「できると思えるから行動する」だけではなく、「少し行動できたことで、できそうだと思えるようになる」

という方向です。

自己効力感を高める方法として、実際に成功した経験は重要な要素として研究されています。

だから、最初から大きな成功を目指す必要はありません。

「できない」を小さくする

例えば、

プレゼン資料を完成させる

と考えて、

「自分にはできそうにない」

と思ったとします。

そこでタスクを分解します。

資料を完成させる。

構成を考える。

見出しを3つ書く。

ここまで小さくすると、

「見出しを3つなら書けそう」

になるかもしれません。

同じ仕事でも、

タスクの大きさによって、

自分にできそうか

という感覚は変わります。

先延ばし対策では、

「もっと自信を持つ」

より、

自信がなくてもできそうな大きさまでタスクを小さくする

という方法が使えます。

最初の目標を「成功できる大きさ」にする

例えば、

勉強を毎日2時間する。

ではなく、

今日は10分だけ勉強する。

部屋を全部片付ける。

ではなく、

机の上だけ片付ける。

資料を完成させる。

ではなく、

タイトルと見出しを書く。

という形です。

重要なのは、

簡単すぎるくらいでも実際にできること

です。

最初の目標が大きすぎると、

できなかった。

やっぱり自分にはできない。

という経験になる可能性があります。

一方、

小さな目標なら、

やってみた。

できた。

次も少しできそう。

という経験を作れます。

「前にもできた」を探す

初めての仕事でも、

すべてが初めてとは限りません。

例えば、

初めて企画書を作る。

としても、

資料を調べた経験。

文章を書いた経験。

PowerPointを作った経験。

人に説明した経験。

などはあるかもしれません。

そこで、

似たことを以前やったことはないか

を探します。

「企画書を作ったことがない」

だけで考えると、

経験ゼロです。

しかし、

「情報を集めて資料にまとめたことはある」

なら、

使える経験があります。

未知の仕事を、

自分がすでにできる作業へ分解する

方法です。

完璧主義と組み合わさると始めにくくなる

自己効力感が低い状態で、

完璧にやらなければ

と考えると、開始のハードルはさらに上がります。

例えば、

「この資料を完璧に作らなければいけない」

でも、

「自分にはそこまでできそうにない」

と感じます。

すると、

失敗するくらいならまだ始めたくない

という状態になることがあります。

そこで、

最初は、

完成版。

ではなく、

たたき台

を作ります。

60点。

30点。

箇条書き。

でも構いません。

「完璧な資料を作れるか」ではなく、

「仮の見出しを作れるか」

までハードルを下げます。

先延ばしと完璧主義については、先延ばしと完璧主義も参考にしてください。

自信がないから調べ続けることもある

先延ばしは、

何もしていない状態

だけではありません。

例えば、

資料作成が不安。

もっと調べよう。

さらに記事を読む。

別の資料も探す。

まだ書き始めない。

ということがあります。

本人は作業しています。

しかし、

本来始める必要がある作業には着手していない

状態です。

「もう少し理解してから」

「もう少し準備してから」

という行動の背景に、

まだ自分にはできない

という感覚がないか確認してみましょう。

準備を完全に終えてから始めるのではなく、

調べながら仮のものを作る

という方法もあります。

先延ばしすると自己効力感が下がることも考えられる

自己効力感と先延ばしを考えるとき、

一方向だけで考えないことも重要です。

例えば、

自分にはできそうにない。

先延ばしする。

締め切り直前になる。

十分にできない。

「やっぱり自分はできない」と思う。

という循環になることがあります。

また、

今日もできなかった。

今週もできなかった。

と先延ばしを繰り返すことで、

自分は行動できない人間だ

と感じる可能性もあります。

だからこそ、

いきなり大きな結果を出すより、

小さくても「予定したことを実行できた」という経験を増やす

ことが大切です。

「できる・できない」ではなく「どこまでならできる?」と考える

難しい仕事を見ると、

できるか、できないか

の二択で考えることがあります。

例えば、

「この企画書を作れる?」

と聞かれたら、

「自信がない」

と思うかもしれません。

そこで質問を変えます。

今の自分なら、どこまでできる?

構成だけならできる。

必要な資料を探すところならできる。

分からないところを整理するならできる。

上司に確認する質問を作るならできる。

という形です。

完成できる自信がなくても、

次の一工程ならできる

ことがあります。

分からないことを一つだけ特定する

「できる気がしない」という感覚は、

何が分からないのか自分でも分からない

ときに強くなることがあります。

例えば、

「この資料、無理そう」

ではなく、

何が無理?

と考えます。

すると、

必要な数字の場所が分からない。

構成が分からない。

ゴールのイメージが分からない。

判断基準が分からない。

などに分解できます。

そこで、

一番最初の分からないことを一つ解決する

ことから始めます。

タスクそのものではなく、

不明点を減らす

ことも最初の行動になります。

人に聞くことも「できるようにする」行動

自己効力感というと、

全部自分一人でできるようになること

と思うかもしれません。

しかし、実際の仕事では、

分からないことを聞く。

レビューしてもらう。

過去資料を見る。

詳しい人に確認する。

といった行動も使えます。

例えば、

「自分一人では正しい仕様を判断できない」

なら、

仕様を知っている人へ確認する

ところまでが自分の行動です。

「全部自分で解決できるか」

ではなく、

必要な助けも使いながら次へ進められるか

と考えてみましょう。

小さな完了を記録する

先延ばしが続いていると、

できなかったことばかり覚えていることがあります。

そこで、

実際にできたこと

も記録します。

例えば、

資料の構成を作った。

10分勉強した。

メールを一件返した。

机を片付けた。

という小さなもので構いません。

「今日は資料を完成できなかった」

だけを見るのではなく、

どこまで進められたか

を確認します。

小さな成功経験を見える形にすることで、

次の行動を考えやすくなります。

先延ばししているタスクを「できそう」に変える

先延ばししていることがあるなら、次の順番で考えてみましょう。

1. 何を先延ばししている?

資料作成。

2. なぜ始めにくい?

難しくて自分にできる気がしない。

3. 何が分からない?

構成が分からない。

4. 今できることは?

過去資料を一つ見る。

5. その次は?

仮の見出しを3つ作る。

このように、

「資料を完成させる」から「次にできる一工程」へ変える

ことで、開始のハードルを下げられます。

Pomolikaで「できそうな10分」を作る

Pomolikaはブラウザで使えるポモドーロタイマーです。

「自分にはできそうにない」

と思って先延ばししている作業なら、

最初から完成を目指す必要はありません。

例えば、

先延ばししている作業を一つ選ぶ

10分でできそうな大きさまで小さくする

Pomolikaを10分に設定する

その作業だけ始める

という使い方ができます。

資料なら、

見出しを3つ作る。

勉強なら、

問題を3問解く。

レポートなら、

最初の100文字を書く。

10分で終わらなくても構いません。

目的は、

「自分にはできないかもしれない」という状態から、「ここまではできた」という経験を一つ作ること

です。

Pomolikaのタイマーを使う

先延ばし全体の具体的な改善方法については、先延ばし癖の治し方も参考にしてください。

まとめ

自己効力感とは、

「ある行動を自分が実行できそうだ」と感じること

です。

先延ばし研究では、自己効力感と先延ばしとの関連が報告されています。

例えば、

難しい。

自分にはできそうにない。

何から始めればいいか分からない。

というタスクでは、開始するハードルが高くなることがあります。

だからといって、

「もっと自信を持とう」

と考えるだけではありません。

まず、

タスクを小さくする。

できる部分を探す。

分からないことを一つ特定する。

人に聞く。

10分だけ試す。

小さな完了を記録する。

といった方法があります。

大きな仕事を前にして、

「自分にできるかな」

と思ったら、

質問を少し変えてみましょう。

「全部できるか」ではなく、「今の自分なら、どこまでできる?」

その答えが、先延ばししている作業の最初の一歩になるかもしれません。