「先延ばし癖があるのは自分だけ?」
「いつも『あとでやろう』となる人は、どのくらいいる?」
仕事や勉強を何度も後回しにしていると、
自分だけ先延ばしがひどいのでは
と思うことがあります。
しかし、先延ばしそのものは珍しい行動ではありません。
研究では、一般成人の中にも慢性的に先延ばしする人が一定数いることが報告されています。
また、大学生など学業に関する先延ばしでは、さらに高い割合を報告する研究もあります。
ただし、
「先延ばし癖のある人は○%」
と一つの数字だけで答えるのは難しいテーマです。
研究によって、
- 誰を対象にしているか
- 何を先延ばしとするか
- どの程度なら「先延ばし癖」とするか
- 仕事なのか学業なのか
- どの質問票を使うか
が異なるからです。
この記事では、先延ばし癖がある人の割合について、研究で報告されている数字を見ながら整理します。
先延ばし癖がある人の割合は約20%?
先延ばし研究でよく紹介される数字の一つが、
一般成人の約20%
です。
先延ばし研究者Joseph Ferrariは、American Psychological Association(APA)のインタビューで、
米国の成人男女のおよそ20%が慢性的な先延ばしをする
と自身の研究について説明しています。
ここで重要なのは、
一度でも先延ばしした人が20%
という意味ではないことです。
Ferrariは、
誰でも先延ばしすることはあるが、誰もが慢性的な先延ばしをする人というわけではない
という区別をしています。
つまり、
今日だけメールを後回しにした。
疲れているので掃除を明日にした。
という人まで、すべて「先延ばし癖がある人」に含めているわけではありません。
APA:Psychology of procrastination
「誰でも先延ばしする」と「先延ばし癖」は違う
日常生活では、
先延ばししたことがある人
と、
先延ばしを繰り返して困っている人
を分けて考える必要があります。
例えば、
一度だけレポートを前日に書いた。
たまに掃除を翌日に回す。
忙しくてメール返信を後回しにした。
という経験なら、多くの人にあるでしょう。
一方、
毎回締め切り直前まで始められない。
何度も「明日から」を繰り返す。
先延ばしによって仕事や生活に問題が出ている。
という状態は少し違います。
そのため、
先延ばしを経験したことがある人の割合
と、
慢性的に先延ばしする人の割合
では、数字が大きく変わります。
大学生では先延ばしの割合が高い研究もある
先延ばしは特に、
大学生
を対象に多く研究されています。
大学では、
レポート。
試験勉強。
卒論。
課題。
など、自分で開始時期を決めなければならない作業が多くあります。
2020年のレビューでは、学生の先延ばしの推定割合は、
働いている人々と比べて2倍から3倍になる研究がある
と整理されています。
大学では、
- 自分で使える時間の自由度が高い
- 締め切りが長い
- 誘惑や気が散るものが多い
- 学習を自分で管理する必要がある
といった環境が先延ばししやすさと関係する可能性が指摘されています。
大学生の52%が頻繁に先延ばしした研究もある
大学生を対象にした研究では、
50%前後
という数字も見られます。
2009年にトルコの大学生784人を対象に行われた研究では、
52%が学業上の先延ばしを頻繁にすると自己申告
しました。
ここで対象になっているのは、
academic procrastination(学業上の先延ばし)
です。
つまり、
生活全般で先延ばし癖がある人が52%
という意味ではありません。
レポートや試験勉強など、
大学での課題をどの程度先延ばしするか
を測った研究です。
最近の研究でも50%前後になる例がある
50%前後という数字は、ほかの大学生研究でも報告されています。
例えば、2025年に中国の大学生986人を対象にした研究では、
学業上の先延ばしが52.5%で見られた
と報告されています。
一方、別の研究では、
高い先延ばし。
中程度の先延ばし。
低い先延ばし。
というように段階を分けています。
2024年の看護学生を対象にした研究では、
高い先延ばし:14.3%
中程度:53.3%
低い:32.4%
という3つのグループが確認されました。
つまり、
どこからを「先延ばし癖がある」とするか
によって、割合は大きく変わります。
なぜ研究によって割合が違うの?
「20%という研究もあるのに、大学生では50%を超えるのはなぜ?」
と思うかもしれません。
主な理由として、
測っているものが違う
ことがあります。
対象者が違う
一般成人。
会社員。
大学生。
高校生。
などでは、生活環境が異なります。
特に大学生は、自分で学習を管理する場面が多いため、学業上の先延ばしが多く報告されることがあります。
先延ばしの定義が違う
研究によって、
慢性的な先延ばし。
学業上の先延ばし。
特性的な先延ばし。
特定の課題の先延ばし。
など、測定対象が違います。
判定方法が違う
質問票の点数から、
高い。
中程度。
低い。
と分類する研究もあります。
「頻繁に先延ばしするか」を自己申告してもらう研究もあります。
そのため、
研究Aの20%と研究Bの50%をそのまま比較することはできません。
「先延ばし癖」という正式な診断があるわけではない
日常では、
先延ばし癖
という言葉を使います。
しかし、
先延ばし癖があるかどうかを一律に判定する医学的な基準
があるわけではありません。
研究では、
procrastination。
trait procrastination。
academic procrastination。
など、目的に応じて異なる概念や尺度が使われています。
そのため、
先延ばし癖がある人は正確に○%
と断言するより、
どの種類の先延ばしをどの基準で測った数字なのか
を見ることが重要です。
大学生で割合が高くなりやすい理由
大学生では、学業上の先延ばしが多いことが繰り返し報告されています。
その背景として、
締め切りまで時間がある
ことがあります。
例えば、
「3週間後までにレポートを提出する」
と言われても、
今日やる。
明日やる。
来週やる。
という部分は自分で決めます。
また、
授業。
アルバイト。
サークル。
スマホ。
動画。
ゲーム。
など、課題以外の選択肢もあります。
2020年のレビューでは、このような、
自由度の高さや長い締め切り、誘惑
など、学習環境そのものも先延ばしを促す可能性があると指摘されています。
大学生の先延ばしについては、大学生はなぜ先延ばししてしまう?課題や勉強を後回しにする原因と対策でも紹介しています。
割合が高くても「普通だから放置していい」とは限らない
先延ばしする人が多いと知ると、
みんなやっているなら問題ない
と思うかもしれません。
もちろん、
一度先延ばししただけで大きな問題と考える必要はありません。
しかし、大切なのは、
何%の人が先延ばしするか
だけではなく、
自分が困っているか
です。
例えば、
締め切りに間に合わない。
仕事に影響している。
大学の課題を提出できない。
必要な手続きを何度も逃している。
先延ばししたことで強いストレスを感じる。
という状態なら、
ほかの人も先延ばしするから大丈夫
だけでは解決しません。
自分の場合に何が起きているのかを確認してみましょう。
割合を見て自分を診断しない
例えば、
成人の約20%が慢性的に先延ばしする
という数字を見たとしても、
「自分はその20%に入っている」
と判断するための診断基準ではありません。
同じように、
大学生の50%前後が先延ばしするという研究があっても、
大学生の半分に問題がある
という意味ではありません。
割合は、
集団の傾向を理解するための数字
です。
自分について考えるなら、
どのくらい頻繁に先延ばしするのか。
何を先延ばしするのか。
どんな問題が起きているのか。
を具体的に見るほうが役立ちます。
自分の先延ばし癖を確認する
先延ばし癖が気になるなら、
割合より先に、自分の行動を振り返ってみましょう。
例えば、
- 何をよく先延ばしする?
- どのくらいの頻度で起きる?
- 締め切り直前になることが多い?
- 結局やらないこともある?
- 仕事や学校へ影響している?
- 先延ばししたあと強く後悔する?
- 特定の作業だけ先延ばしする?
といった点です。
例えば、
メールだけ返信を先延ばしする
なら、文章や相手の反応が負担なのかもしれません。
大きな仕事だけ先延ばしする
なら、タスクの大きさが関係している可能性があります。
「先延ばし癖」という一つの言葉だけでなく、
どんな場面で起きるか
まで見てみましょう。
先延ばし癖そのものについては、先延ばし癖とは?なぜ「あとでやる」を繰り返してしまうのかでも紹介しています。
先延ばしが珍しくないと知る意味
割合を知ることには、
自分だけの特殊な行動ではないと分かる
という意味があります。
一般成人でも慢性的な先延ばしが報告されています。
大学生では、学業上の先延ばしがさらに多く報告される研究があります。
つまり、
先延ばし自体は広く研究されている行動
です。
ただし、
「多くの人がやっている」
で終わるのではなく、
研究されているからこそ、原因や対策についても知ることができる
と考えてみましょう。
先延ばし研究全体については、先延ばしの研究・論文まとめでも紹介しています。
先延ばし癖が気になるなら割合より原因を見る
先延ばしを繰り返しているなら、
「何%の人が同じなのか」
を知ったあと、
では自分はなぜ先延ばししているのか
へ進んでみましょう。
例えば、
作業が面倒。
何から始めればいいか分からない。
失敗が不安。
完璧にやろうとしている。
締め切りが遠い。
スマホが気になる。
疲れている。
などがあります。
同じ「先延ばし癖」でも、原因は人や場面によって違います。
原因については、なぜ先延ばししてしまう?心理学から考える原因とメカニズムで詳しく紹介しています。
Pomolikaで一つの先延ばしから変える
Pomolikaはブラウザで使えるポモドーロタイマーです。
先延ばし癖があるかどうかを考えていても、今先延ばししている作業があるなら、
一つだけ実際に始めてみる
ことができます。
例えば、
先延ばししていることを一つ選ぶ
↓
最初にする行動を決める
↓
Pomolikaを10分に設定する
↓
10分だけ始める
という流れです。
資料なら、
10分で見出しを作る。
勉強なら、
10分で問題を3問解く。
掃除なら、
10分だけ机の上を片付ける。
「先延ばしする人が何%いるか」を知ることと、
自分の次の行動
は別です。
割合を確認したら、今先延ばししている一つへ戻ってみましょう。
まとめ
先延ばし癖がある人の割合について、
一つの正確な数字が決まっているわけではありません。
代表的な例では、先延ばし研究者Joseph Ferrariが、
米国成人の約20%が慢性的な先延ばしをする
と紹介しています。
一方、大学生を対象とした研究では、
学業上の先延ばしを頻繁にする人が約52%
と報告された例もあります。
ただし、
一般成人。
大学生。
慢性的な先延ばし。
学業上の先延ばし。
では、測っているものが違います。
そのため、
「先延ばし癖がある人は○%」と一つの数字にまとめない
ことが大切です。
先延ばし自体は、多くの人を対象に研究されている行動です。
だからといって、
多いから放置していい。
少ないから自分はおかしい。
ということでもありません。
割合を知ったあとは、
自分は何を、どんなときに先延ばししているのか
を見てみましょう。
そして今困っている先延ばしがあるなら、一つだけ小さくして始めるところから考えてみてください。